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大人の事情とともに味わう最高のハイボールの飲み方

今や圧倒的な人気を誇り、誰もが知っているお酒「ハイボール」ですが、そのブームのきっかけは一つの企業が火をつけ、あっという間に日本中に広がった、という事をご存じでしょうか。

そもそも、ハイボールとはウイスキーのソーダ割りのことです。ウイスキーの故郷イングランドはもちろん欧米、そして日本でも古くから存在している飲み方でした。

ただ、それほどメジャーな飲み方ではなく、ここまでハイボールが飲まれている国は世界でも日本だけと言われています。

では、このブームはなぜ起こったのでしょうか。

その裏側を紐解くことで大人ならではの最高のハイボールの飲み方が見えてきます。

本記事では、2つの内容(前半がハイボールブームの話。後半が最高のハイボールの飲み方)に分けて紹介します。

ぜひ、ハイボールでも飲みながらご一読ください。


その前に、最高のお酒の定義とは

最高のお酒は?などというテーマで話をはじめれば、その定義については、いくつもの意見がでてきてしまうことでしょう。

そのため、ここでは人生のワビサビを知った大人ならではの飲み方。つまり、そのお酒が生まれた背景やそこに関わった人たちの思いを理解しつつ、明日からの仕事や生活に潤いを与えるような、そんなお酒とさせていただきます。

もちろん、そのハイボールを飲むうえで、大人ならではの一手間かけた飲み方も紹介させていただきます。

売れない酒、ウイスキーの復活をかけたプロジェクト

「ビールのように1杯目から気軽に飲めるイメージ」。これが2008年にサントリーが掲げたウイスキー販売戦略におけるキーコンセプトでした。

40代より上の方であれば、これが当時、どれだけ無謀なキーコンセプトであったか、想像に難しくないでしょう。

なにしろ当時、ウイスキーはまったく売れておらず、サントリーの調査結果でも、

・古くさい(おじさんの酒、ウンチクの酒、ギフトで贈りたくない、サラリーマンの上下関係)
・飲みにくい(アルコール度数が強い、料理に合わない、難しくてとっつきにくい)
・飲む場がない(周りが飲んでいない、1軒目の飲食店で目にしない、バーには行かない)

という結果が出ていたくらいなのです。

いまでもウイスキーをロックやストレートで飲む人は、こだわりをもった一部のウイスキー愛好家だけで、決してメジャーな飲み方ではありません。

その意味でもハイボールはウイスキーを国民的お酒にするために導き出された究極の最適解だったと言えるのではないでしょうか。

ハイボールはサントリー100年越しの夢の結晶

では、なぜ、そこまでしてウイスキーにこだわったのか。

それはサントリー創業者の夢がそこにあったからです。

NHKの連続テレビ小説でも有名になりましたが、およそ100年前、日本には輸入ものの高級ウイスキーしかない時代、国産ウイスキーに夢を馳せ、多くの日本人に本物のウイスキーを味わってもらいたい・・・。そんな思いが脈々と受け継がれてきたのでしょう。

さらに、お酒の主力商品だったビールでさえも、若者のビール離れと言われるようになり売上は徐々に落ちていました。酒造メーカーとしては、もう後が無い状況だったのです。

そんな訳でサントリー社内にウイスキー復活のためのプロジェクトが誕生したということです。それにしても25年もの間、ダウントレンドに入ってたウイスキー市場を大どんでん返しする秘策は、どこにあったのでしょうか。

なんと、それはサントリー本社からほど近い銀座の立ち飲み屋「マルギン」にあったのです。

ウイスキー復活のプロジェクトを担っていた若手社員が、そのお店を視察したところ、まるで時代が止まっているかのように20代から50代まで多くの客がハイボールばかりを飲んでいたのです。

ウイスキー好きの若手社員が切り開いた道

ウイスキー復活の鍵がハイボールだという正解を知っている現在では、全然ワクワクしませんが、当時の若いメンバーで構成されたプロジェクトがハイボールという仮説に辿り着いたときを想うと、仕事を越えた興奮が湧きおこってきます。

「これだ! これなら古くさいどころか、いまの若者にも”自分たちに合う酒”だと感じられる。ハイボールならウイスキー離れの問題を解決できる。そう確信しました」
当時のことを振り返るインタビューでプロジェクトのリーダーはこのように語っています。

このハイボールで本当に行けるのか、それを裏付けるためにプロジェクトのメンバーは、あらゆる飲み屋を歩き回り、マルギン同様にウイスキーのソーダ割りがよく出るお店が何軒もあることを突き止め、ついにハイボール復活プロジェクトとして、歴史に残る大どんでん返しが始まるのでした。

このあとは、皆さんもご存知の通り素敵な女優さん達がテレビCMに登場し、あっという間に日本にハイボールという言葉が広がっていきました。

かつてウイスキーばかり飲んでいた者として

かく言う、筆者は学生時代に湘南地方のとあるパブでアルバイトをしていました。そのお店のメインターゲットは40代から50代だったということもあり、ウイスキーやブランデーが多く飲まれていました。大人の味に興味のある年頃だったので、たくさん飲ませてもらい、おかげで30年も昔の話しですが、いまでもそれらの銘柄そして味をはっきりと覚えています。

20代はもちろん、30代でもウイスキーというお酒はなかなか手が出にくいジャンルなので、たとえ自分が好きだったとしても、それが同世代の友人にも好んでもらえるかというと、当時の私としては、まったく自信がありませんでした。そして、アルバイトを辞めたあとは、めっきりウイスキーからも遠ざかってしまいました。

あのとき、ハイボールがあれば私のお酒人生も少し変わっていたかも知れませんね。

参考文献(サントリー ハイボール復活プロジェクト等)

https://www.suntory.co.jp/recruit/fresh/development/kakuhigh.html

https://www.works-i.com/column/saino/detail006.html

https://j-net21.smrj.go.jp/special/populardrinks/2011030201.html

https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1501/27/news036.html

そしてウイスキーは復活した

さて、まるでドラマのような、25年もの間、市場から見向きもされなかったウイスキーを復活させたプロジェクトのストーリーはいかがだったでしょうか。

まるでサントリーの広告のような内容でしたが、ここで伝えたかったことは、今当たり前のように目の前にある物にも様々なストーリーがあり、人生を重ねた大人だからこそ、そうした裏側にも注目して思いを馳せるのもいいのでは、ということです。

昨今、飲み会も減っていますが、次回の飲み会では会社の部下のモチベーションアップに、こんなネタも活用してみてはいかがでしょうか。

その際は、くれぐれも貴方の武勇伝にならないように飲み過ぎにはご注意ください。

と、ここまではハイボールのブームについて述べさせていただきました。
後半では、いよいよ最高のハイボールの飲み方について紹介します。

物理を応用して最高のハイボールを作る

少々、大袈裟な見出しにしましたが、何かと何かを混ぜるとき、それらはすべて物理で語ることができます。

それでは、早速ハイボールを物理で語ってみましょう。

まずはハイボールを構成する物体をひとつずつ分解してみましょう。といっても、ハイボールの材料は、たった3つなので簡単ですね。

そして、忘れてならない物体がもう一つあります。それはグラスです。ハイボールは常にグラスに接触しているため、構成する物体から除外することはできません。

ハイボールを構成する4つの物体

・氷
・炭酸水
・ウイスキー
・グラス

これらはあくまで基本の物体です。ここにレモンなどオプションを加えることでさらに味に変化をもたらすことができますが、本記事ではベーシックな最高のハイボールの作り方を紹介します。

美味しいハイボールのたった一つの条件、それは氷が溶けないこと

美味しいハイボールとそうではないハイボールの違いは、なんだと思いますか。答えはシンプルです。飲んでいる途中で味が変わるか、変わらないかです。

そのポイントとなるのが、氷なのです。

普通にハイボールを作った場合、好みの濃さでウイスキーを割ったとしても、数分かけて飲んでいる間に、どんどん氷は溶けていきます。そして、1杯飲み終える頃には最初の味と比べて、かなり薄くなってしまいます。

真夏にカフェでアイスコーヒーを買ったときを思い出してください。飲みはじめと最後では、氷が溶けて大量の水でコーヒーが薄まってしまい、まるで別物のように味が違っていますよね。ハイボールでも同じ現象がグラスのなかで起こっているのです。

さらに、せっかく強炭酸のソーダを選んだとしても、ウイスキー同様に薄まってしまい、炭酸が早く弱まってしまいます。

すべては氷を溶かさないために・・・

最高のハイボール、それは「氷が溶けない」ハイボールです。そのためにハイボールを構成する4つの物体を極限まで冷やし、氷が溶けない環境を作ることを意識してください。

・氷:大きな球体の氷を使います。
・炭酸水:凍るギリギリの温度で冷やします。
・ウイスキー:冷凍庫で冷やします。
・グラス:真空二重構造のタンブラーを使います。

まずはこれが基本です。
それぞれについて、さらに詳しく解説します。

大きな氷にすることで、グラスのなかに炭酸が上昇する煙突のような細い通路を作りやすくします。炭酸が当たることで氷が溶けやすくなるので、それを防ぎます。
形状も重要です。四角い氷は角が溶けやすいため、丸い球体にすることで溶けることを防ぎます。
また、軟水のミネラルウォーターは不純物が少なく、透明で溶けにくい氷を作ることができるので、ぜひ利用していただきたいです。南アルプスの天然水などは入手もしやすいのでおすすめです。

炭酸水

保存場所は通常の冷蔵庫で十分です。注ぎ込む直前に取り出すようにし、継ぎ足す場合も、いちいち冷蔵庫に戻すなど、とにかく常に冷やしておくことが重要です。
よくシャンパンなどをワインクーラーで冷やしてるのを見かけますが、同じように炭酸も冷やすことで発泡力を維持できます。氷を溶かさないため、そして、強い発泡力を維持するために、炭酸は徹底的に冷やしましょう。

ウイスキー

氷と炭酸水の扱いは、みなさん気を付けている方も多いと思いますが、実は最も氷を溶かす原因はウイスキーです。そのため、ウイスキーをオブジェのように常温の棚に置いている方、それはNGです。それまでの努力が、文字通りすべて水の泡になります。
アルコールの凝固点が低いことはご存じかと思いますが、ウイスキーはアルコールのなかでも40度とかなり度数が高い部類になるため、その凝固点は約マイナス30度です。安心して冷凍庫でボトルごと冷やしてください。凍結することは絶対にありません。むしろ、氷並みに冷えた状態を維持できるので最高のハイボール作りには欠かせない工程です。

グラス

お酒はグラスのなかの様子を見ながら、じっくり飲む。なんてことがありますが、普通のグラスを使ってしまうと、手から体温が伝わり、夏であれば室内の温度が伝わり、氷は溶けやすい状態になります。
そこで真空二重構造のタンブラーの登場です。グラスのなかの温度を低温で維持することができます。これにより、氷、炭酸水、ウイスキーのすべてが長時間低温のままとなるのです。何杯飲んでも、最初の氷が溶けないのでぜひ今日から試してみてください。

ハイボールにもっとも適したウイスキーとは

さて、ここまではハイボールブームの背景、そして最高のハイボールのつくり方について紹介してきましたが、皆さんが一番興味のあるハイボールにもっとも適したウイスキーの銘柄についても紹介しましょう。

ただし、味の評価というのは一番曖昧でデータや過去の資料などで説明しても説得力に欠けてしまいます。そこで、私の好みとともにハイボールブームの背景と合わせて、何が一番相応しいのか、という観点でハイボールにもっとも適したウイスキーを紹介します。

ブームの背景から読み解く

最初にサントリーが掲げたキーコンセプトを思い出してください。

「ビールのように1杯目から気軽に飲めるイメージ」です。

これが何を意味するかというと、リーズナブルな価格で飲めるウイスキーということです。

ハイボール好きの方なら、誰もが一度は高価なシングルモルトでハイボールを作ったことがあると思いますが、私を含めその飲み方をおすすめする人は少ないでしょう。

ウイスキーは芳醇な香りを楽しむお酒なのでストレートで飲むのが基本です。せっかくの高級ウイスキーを水やソーダで薄めるのは、勿体ないという以前に、贅沢を気取ったカッコ悪さすら感じてしまいます。

日本では、ウイスキーと言えば水割りというくらい割るお酒として長らく愛されてきました。その理由には所説あり、軽々に語ると炎上しかねないのでその話題は別の方に譲るとして、ハイボールはリーズナブルなウイスキーで作ることこそが王道である、と私は読み解きました。

1000円で買えるウイスキーからベストを選ぶ

ずばり、1000円程度のウイスキーで、もっともハイボールに合うものは何か?
2020年から2021年にかけて、私はおよそ50銘柄の1000円前後のウイスキーを飲み比べました。
あくまで、私の好みではありますが、自信を持っておすすめできる、3本を紹介します。
なお、ピートがどうとか、味わいのディティールについては好みが出てしまうので、あえて割愛させていただきます。

1本目:「ホワイトホース」 839円(楽天)

https://item.rakuten.co.jp/bigbossshibazaki/10013016/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_113_0_10001868&icm_acid=641-897-3033&icm_agid=56283008552&rafct=i_1&iasid=wem_icbs_nonconv2111&gclid=CjwKCAiA55mPBhBOEiwANmzoQgfALCLLArOvERX6goFiIlYRGD9EI1dIv6KIvFCiQcmAqKEfZTk0yBoCDcgQAvD_BwE&icm_cid=1424830504&gclsrc=aw.ds

信じられないコスパのウイスキー。とにかく安い。そして美味い。さすがにたくさん売れているので大量仕入れの薄利多売戦略なのか、いずれにしても金額だけで、実力を決めつけてはいけないウイスキーです。
ストレートやロックで飲むと、さすがにシングルモルトとの差は歴然ですが、紹介した最高のハイボールの作り方ならば、毎日の晩酌にはちょうどよいお酒になることでしょう。

2本目:「ブラックニッカ スペシャル」1,221円(楽天) 

https://item.rakuten.co.jp/wineuki/9903000011629/?scid=af_pc_etc&sc2id=af_113_0_10001868&iasid=wem_icbs_nonconv2111&rafct=i_1&icm_agid=58457838848&gclid=CjwKCAiA55mPBhBOEiwANmzoQmjn6cHRFwG17BqoOjVqKvk1pTJh-Yaldx524TU9WPIhFMjDQLQzmxoCKX4QAvD_BwE&icm_acid=641-897-3033&icm_cid=1102570989&gclsrc=aw.ds

国産ウイスキーでもっともハイボールに合うウイスキーとして紹介します。スコッチのホワイトホースに対して国産ということで値段は少々高めです。ブラックニッカシリーズは、このスペシャルを含め数種類あります。もちろんすべてを飲み比べましたが、このスペシャルだけは50銘柄飲んだなかで特に記憶に残る美味しさだったので、おすすめします。
最近、町のスーパーではあまり見かけなくなっており、終売になるのでは、という噂もあり、気になる1本です。


3本目:「バランタイン ファイネスト」 1,040円(楽天)

https://item.rakuten.co.jp/ledled/3-ballantines-finest/

大本命の1本です。数段ランクが上のウイスキーと肩を並べる味わいです。
どうしても値段が安いので、それなりという評価をしてしまいがちですが、50銘柄のなかでも群を抜いた存在感でした。調査飲みを終えたあとは、このバランタイン ファイネストがもっぱら愛飲酒となっています。
ほとんどのスーパー、そしてコンビニでも販売しているのでストックを切らす心配もありません。
また、ボトル形状が薄く狭い冷凍庫にもいれやすいので私は常に飲みかけと未開封の2本をストックしていました。

自分だけのお酒を楽しもう

さて、長編で最高のハイボールについて紹介してきましたが、皆さんの日々の生活が少しでも豊かになれば幸いです。

たまには、一杯のハイボールに一手間、二手間かけてみてはいかがでしょうか。そこには必ず新たな発見があるはずです。

まだまだ、巣ごもり生活が続きそうですが、そんな時間も有効活用して、自分だけのこだわりのお酒、そしてその飲み方を見つけてみてください。

(イチロー)

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