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食の大国だからこそ食品ロスに敏感であれ!イタリアで浸透するアンチ食品ロスのためのアプリ

「食品ロス」という言葉をよく耳にするようになりました。

気候の変動などからも実感できる環境問題はもはや、全人類が共有しなくてはならない懸案事項であり、食品ロス問題もその範疇にある緊急課題のひとつなのです。

美食の国イタリアは、マンマが家族のために美味しい料理をたくさん作るという伝統があります。いっぽうで食にこだわる国だからこそ、食品ロス問題にも敏感に反応し、解決に向けてのアプリの普及が目立ってきました。

イタリアで普及しつつある、食品ロス軽減アプリについてご紹介いたします。

ゴミ箱行きの食品の量とは?

農林水産省によれば、食べられる状態にあるにもかかわらず廃棄されている食料の量、つまり食品ロスは、年間13億トン。この数字を聞いてもピンときませんが、生産される食品の3分の1が廃棄されていると知れば、その深刻さも実感できます。(※1)

日本の状況も他人事ではありません。

日本の食品ロスは年間612万トンで、国民1人当たり64kgの食品を廃棄していることになるのだそうです。(※1)

そして美食の国イタリアの状況はさらに深刻で、国民1人当たりの食品ロスは年間67kgにもなります。

この問題を解決すべく、数年前からイタリアではさまざまなアプリが普及しつつあります。

いったい、どんなアプリなのでしょうか。その一部をご紹介いたします。

・TOO GOOD TO GO

イタリアで最もよく知られる対食品ロスアプリといえば「TOO GOOD TO GO」

2015年にデンマークで誕生したこのアプリは、欧州の各国に普及しつつあります。

このアプリのシステムはごくシンプル、レストランやベーカリー、スーパーマーケットなどで売れ残ってしまった食品を、格安で消費者に提供するというものです。「マジックボックス」と呼ばれる売れ残りの商品のセット、日本の福袋に似た趣があります。公式サイトによれば、このマジックボックス1袋でCO2の排出を2kgも回避できるのだとか。

イタリアでは各地のピザ屋、Coop等のスーパー大手だけではなく、高級チョコレートブランドのVenchiや、選りすぐりの食材のみを販売するEatalyも参加しています。

・LAST MINUTE SOTTO CASA

スーパーマーケットなどの大型店ではなく、個人のお店と顧客との関係がまだまだ強いイタリア。

「LAST MINUTE SOTTO CASA」は、自宅から近距離内にある食料品店の食品ロスをなくすべく、2014年にトリノで立ち上げられたアプリです。

お店は賞味期限が迫っている食品、消費期限が迫っている生鮮食品などを割引価格でアプリにアップ、これを見た常連さんや近所の人が購入するというシステムです。

個人との関係が濃厚なイタリアにマッチしたこのアプリ、現在はイタリア全土に広がっています。

・Svuotafrigo

購入することでお店の食品ロスを貢献するのではなく、自宅の食品ロス解消のために開発されたアプリが「Svuotafrigo」です。その意味するところは「冷蔵庫の中身を一掃する」。

ついつい買いだめしがちな現代人、冷蔵庫に入れたままその存在を忘れてしまうという経験は誰にでもあるでしょう。

そこで、冷蔵庫にある食材を使ってどんな料理ができるのかを伝授してくれるのが、このアプリです。紹介されるレシピ数はなんと2万5000強。

購入することで食品ロス解消に寄与するのではなく、まずは自宅から取り組もうという、新鮮なコンセプトが人気です。

・アプリ以外にも

このほかイタリアでは、結婚披露宴などのために大量に用意された料理が手つかずで余った場合、低所得の家庭に配布するというシステムが若者たちによって立ち上げられ、話題になったこともあります。

家族や友人たちが集まる場ではとにかくたくさんの料理を用意するというイタリアの伝統も、食品ロスの問題とともに見直されつつあるのです。

賞味期限問題にも着目

食品ロスの原因のひとつに「賞味期限」があるといわれています。

賞味期限とはそもそも「品質の維持が可能な期間」であり、多少風味が落ちるとはいえ、その多くは食用可能であるケースが多いのです。(※2)

ところが賞味期限が切れた後の食材は、食べると健康に害を与えるとイメージする人が多く、まだ食べられる食品が廃棄されていくケースが後を絶ちません。

これに対してもイタリアでは、いくつかの対策が生まれています。

・賞味期限とともに「まだ食べられる!」のマークを

2022年5月、新聞紙上に食品の賞味期限欄の隣に「まだ食べられる!見て嗅いで味見して確認(Spesso buono oltre. Osserva. Annusa. Assaggia)」のマークを入れることを、大手食品企業間で合意したと伝えられました。とくに消費が多い日常的な食品数万点に、まずこのマークが入れられることになるようです。

・賞味期限後に食用可能か知るためのアプリも

まだボランティアによる試用の段階ですが、購入した商品の賞味期限ではなく、食用が可能かを知るためのアプリ「TT-No Waste Code」も生まれました。

これは、購入した商品を登録することで「消費可能」「廃棄が妥当」と表示されるアプリです。とはいえ、保存状態や居住地の気候も関係があるため、実用化されて普及するにはもう少し時間がかかりそうです。

最後に

飽食の時代に生きる私たちですが、いっぽうでは飢えに苦しむ人が数えきれないほどいることも事実です。食のバリエーションの豊かさは消費者としては非常に嬉しいもの。しかし消費しきれなかった食品の裏には、環境問題や飢餓の問題が潜んでいることを覚えておきたいものです。

大人の分別をもって、食の消費や廃棄問題に取り組んでいきましょう。

(cucciola)

<引用元>

※1.農林水産省「食品ロスの現状を知る」
※2.UNEP「UNEP Food Waste Index Report 2021」
※3.小学館日本大百科全書(賞味期限)

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