エレベータートークとは、短い時間の中で言いたいことを簡潔に伝えるトークスキルです。エグゼクティブな人々にとっては、新人研修でコーチングする機会も多いのではないでしょうか。
しかし、通常のエレベータートークではなく、相手をハッと目覚めさせるようなひと言を付加できる人物こそ、ワンランク上のビジネスパーソンです。
今回は、エレベータートークにおいて、誰もができそうでできないプラスワントークのコツをご紹介します。
エレベータートークとは
まずはエレベータートークのおさらいから始めましょう。
エレベータートークは、数十秒ほどの限られた短い時間内で、自分の言いたいことを簡潔かつ明確に伝えるトークスキルのことを言います。同じエレベーターに乗り合わせた人に対し、目的の階に到着するまでのエレベーター内での会話という、ビジネスではよく見られるシチュエーションを比喩したものです。
エレベータートークは、アメリカのシリコンバレーが発祥のビジネスカルチャーであり、その地域には起業家や開発者が多く集まっています。多くの起業家は、エレベータートークをきっかけに大きなビジネスチャンスを手にしようと、長きにわたり活用してきました。
しかし、アメリカから広がったエレベータートークスキルは、日本でも新人研修で取り入れられるほど、ビジネスパーソンとしての基礎になりつつあります。特に、若い世代の人々は、SNSのような短いテキストで自己表現をすることに慣れています。そのため、もはや定番のエレベータートークでは、周囲とは差をつけるほどの自己ブランディングが実現しません。
ワンランク上のビジネスパーソンになるためには、ただでさえ短い時間の中で行うエレベータートークに、相手を瞬時に引き込むほどのプラスワントークが求められるのです。次の章では、そのコツについて具体的にご紹介していきます。
エレベータートークにプラスワントークするコツ
エグゼクティブであっても、最初から優れたエレベータートークをこなしていたわけではありません。エレベータートークに関わらず、どの分野でも「センスがある」「才能がある」と言われるその裏には、豊富な知識と経験があってのことです。
この章で、優れたエレベータートークのためのコツをつかみ、実践を繰り返してみましょう。
・常に準備をしておく
大きな成功を収めた人の中には、本当に運良くチャンスを手にした人もいるでしょう。しかし、継続して成功を収めている人は、「運が良い」だけではなく、「いつチャンスが訪れてもいい準備」ができているのです。
まずは、大事な商談やプレゼンの前に準備やシミュレーションを行うのと同様、突如として訪れるかもしれない、究極のショートプレゼンテーションのために準備をしておきましょう。
社会情勢や市場の動向などを把握しておくことは、ビジネスパーソンとしての基礎です。そして常にアンテナを張り、斬新なアイディアを生み出すことに注視してみましょう。何かアイディアや企画を閃いたときは、論理的に考え直すことでロジカルシンキングも鍛えられます。優れたエレベータートークを行うには、日頃からロジカルシンキングができることが重要になります。
・最後のプラスワントークに集約する
エレベータートークは、「結論を先に述べる」ことが定番の話し方です。しかし、より優れたエレベータートークでは、最後につけ加えるひと言で、トークの終焉を感じていた相手の心をグッと引き寄せるのです。
コツとしては、商品やサービスのキャッチコピーのように、アイディアや企画を「ひと言で言える」内容にすることです。
過去にあった最もお手本にしたいものを2つ取り上げましょう。1つめは、Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏が、iPodを初披露した際のプレゼンで放った「ポケットに1000曲を」という言葉です。2つめは、シャネルの創業者のココ・シャネル氏は、自らの作品を「着飾るためでなく、生きて働くための服」と説明しました。
ここには、商品のサイズ感やコンセプト、ユーザーニーズなどがひと言に集約されており、誰もが瞬時にイメージすることが可能です。長々と商品やサービスの説明をするよりも、最後にプラスするひと言によって、一瞬で商品をイメージさせることができれば、考える時間を与えることも、質問を受けることも可能になるのです。
エレベータートークでは、短い時間で相手に採用の可否を決めてもらう必要はありません。重要なのは、ひと言でイメージできるプレゼンを行うことで、興味を持ってもらい、次のフェーズへと相手を導くことです。
・プラスワントークには余裕とスキルが必要
プラスワントークをエレベータートークにつけ加えるには、時間的余裕と精神的余裕の2つが必要です。そのうち、エレベータートークでは、精神的余裕を持つことの方が有利にはたらきます。対面できるであろう時間を予想し、話の構成を考えられる精神的余裕を身に着けるには、何度も実践してスキルを身に着けるしかありません。
まずは、セルフトレーニングから初めてみましょう。コツとしては、自分の考えたエレベータートークをテキスト化して、ボイスメモなどに録音してみましょう。自分の話を客観的に聞くことで、話し方のスピードやクセなどを把握し改善できます。また、おおよその時間を計ることも可能です。
さらに、臨場感を出すために、実際にエレベーターで1人になったときにもシミュレーションしてみましょう。限られた時間というシーンでは、電車の乗り換えや信号待ちという状況も良いかもしれません。知人や部下などを相手に物事を説明する際に、エレベータートークを自然に取り入れられるようになったら、スキルが定着してきたとも言えるでしょう。
重要なのは、限られた時間であっても、プラスワントークするための時間を確保できる「精神的余裕」を持つことです。
まとめ
エグゼクティブな人々は、エレベータートークをすでに身に着けており、何度も成功してきたからこそ、現在の社会的地位についていることと思います。
しかし、多くの人がエレベータートークとして認識しているものとは差をつける、プラスワントークスキルを活用している人は、そう多くはないでしょう。
今後は、定型文ではないプラスワントークしたエレベータートークを実践できることで、聞き手の心を惹きつけ、より大きな成功をつかむきっかけになるかもしれません。また、このスキルを周囲の人にコーチングすることで、影響力のあるリーダーとして、周りからの評価も高まることでしょう。
(ONIGIRIMUSIC)