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アートは健康維持に役に立つ!世界保健機構も認めたアートのパワーとは

近年、抗生物質の摂取を控える動きが世界中で広がっています。

抗生物質の過剰摂取によって多くの病原菌が薬品耐性を得てしまうことが多く、薬の飲み方が見直されつつあるためです。(※1)

一方で、副作用のない治療法が注目を浴びつつあります。

そのひとつがアート。

世界保健機関(WHO)も提唱したアートが持つ健康への寄与とは、どのようなものなのでしょうか。

世界で進行中のアートをめぐる健康効果についてまとめてみました。

●世界保健機関(WHO)のレポート

2019年に世界保健機関が発表した報告は、なかなかインパクトが強いものでした。(※2)

そこで報告された研究は「健康と幸福な生活のためにアートが果たす役割についてのエビデンス」と名付けられています。(※3)

それによれば、アートには具体的に次のような病気に対して効能があると報告されたのです。

・パーキンソン病

・アルツハイマー型認知症

・うつ病

・心血管疾患

さらに世界保健機関は、アートは健康の維持や病気の予防、病床にある人の生活の向上に役に立つことも報告しています。

いうまでもないことですが、アートには骨折を治癒するなどという即効性もない代わりに、薬のような副作用はありません。

またアートを健康の維持や療養に使用することは、現在世界的規模で推進されている持続可能性にも貢献することであるとしています。

つまり、アートを健康な生活を営むために大いに利用しましょう、と呼び掛けているわけです。(※3)

●そもそもアートとは

アートと聞くと、苦手意識を持つ人も多いことでしょう。

しかしラテン語の「Ars」に語源を持つアートは、実は非常に幅広い分野を指します。ただ美術を鑑賞するというだけにとどまらないのです。

実際、世界保健機関も健康に寄与する「アート」について、以下のように定義しています。

・芸術鑑賞

・絵画などの創作活動

・歌ったり踊ったり演じるなどのパフォーマンス

・コンサートに行くなどの音楽鑑賞

・映画を見る

つまり、カラオケに行ったり好きな音楽を聴くといったシンプルな行いも、健康の維持に役立つということになります。

研究が示すアートの効能

それでは具体的に、アートはどのくらい健康維持に役立っているのでしょうか。いくつかの研究結果を見ていきたいと思います。

・歴史的遺産を見学するとストレスホルモンが減少する!

2019年、イタリアのボローニャ大学がこんな研究結果を発表しています。(※4)

16世紀に建てられた大聖堂を見学した人の唾液を、鑑賞前と鑑賞後に分析してみました。

その結果、コルチゾールの値が最大で60%低下したことが報告されたのです。

コルチゾールはストレスによって増加し、血糖値や血圧の数値を上昇させるため、ストレスホルモンの指標とされています。

つまり大聖堂内で美しいフレスコ画を2時間ほど見学したことにより、ストレスの軽減にやくだったというわけです。

・芸術品に触れると幸せホルモンが増加する!

ロンドン大学教授で神経生物学者であるセミール・ゼキ氏は、芸術作品に触れる効能について「恋をしているときと同様の幸福感」を得られる、と報告しました。(※5)

アートを鑑賞すると神経伝達物質であるドーパミンが増加し、脳の全当然皮質の活動が活発になるのだそうです。ドーパミンは別名「幸福のホルモン」と呼ばれるものです。

ゼキ氏によれば、これは心理学者のミハイル・チクセントミハイが「フロー」と呼ぶ状態で、集中力が上昇し恍惚を感じるというポジティブな心理状態にあるのだそうです。

これは精神の修養につながるものであり、芸術的な体験が心と体の「ジム」となり得るのだとか。

ちなみにこの美的体験とはアートの鑑賞や想像にとどまらず、音楽を聴いたり映画を見たり、あるいは自然の中に浸るといった体験も含まれるとしています。(※5)

・アートの鑑賞は血圧を下げる!

2018年の研究では、アートのカテゴリーと血圧の関係に関する研究も行われています。

それによると、抽象画や現代美術を鑑賞した人よりも、よりわかりやすい具象画を見た人は血圧や心拍数が低下する傾向にあったのだそうです。(※6)

感性において「好き」と感じる芸術を見ることが、生活習慣病の予防につながる可能性があるのかもしれません。

●経済産業省も注目する文化活動の重要性

芸術やアートというと敷居が高いイメージがありますが、音楽を聴いたり映画を見たりというレベルならば日常的な「文化活動」の範疇にあります。

こうしたなにげない文化活動は、実は死亡リスクを下げるという結果まで出ています。(※7)

なんらかの文化活動を行っている人は、まったく行っていない人と比べると死亡リスクが最大で30%も低くなるのだそうです。

こうしたさまざまな研究結果は、日本の経済産業省も大いに注目しています。(※8)

アートを積極的に取り入れた企業では、社員の想像力や問題提起力、実践力に向上が見られたのだそうです。

アートとは、メンタル面での強い味方になってくれることはまちがいないようですね。

●「好きなもの」であることが条件!

アートと健康に関するさまざまな研究結果には瞠目させられますが、その多くは「好きなもの(こと)」が条件となっています。

つまり、自分で楽しいと思える文化活動でなければ、健康に寄与することは難しいというわけです。

高尚なアートの鑑賞である必要はなく、身近にある「文化活動」でメンタルの健康を保持していきましょう。

(cucciola)

<引用元>

※1.厚生労働省「一人ひとりの心がけが大切抗生物質・抗菌薬の正しい使い方」

※2.世界保健機関「Arts and Health」

※3.世界保健機関「What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review」

※4.National Library of Medicine「Magic Moments: Determinants of Stress Relief and Subjective Wellbeing from Visiting a Cultural Heritage Site」

※5.The Telegraph「Viewing art gives same pleasure as being in love」

※6.Arts & Health「Visits to figurative art museums may lower blood pressure and stress」

※7.ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル「The art of life and death: 14 year follow-up analyses of associations between arts engagement and mortality in the English Longitudinal Study of Ageing」

※8.経済産業省「文化資本経営促進に関する調査研究事業 成果報告書」

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