イタリアワイン入門
世界を代表するワイン生産国、イタリア。バローロ、キャンティといった「有名どころ」の銘柄は誰もがご存知かと思いますが、それ以外は聞いたこともない品種が多く、コンフォートゾーンを抜け出すのが難しいかと思います。今回はソムリエとしてスマートなイタリアワイン選びをご紹介致します。
スマートなワインの注文方法
まず最初にお店でのワインの選び方。ワインは食事に合わせて選びます。ウェイターが時折、先にドリンクの注文を聞くことがありますが、この際は食前酒としてのカクテルやスパークリングワインのみを頼み、注文しない場合は「先にメニューを見させて下さい」と伝えて問題ありません。
お食事のメニューが決まってから、初めてワイン選びに入ります。ワインは単純に有名で値が張れば美味しいという訳ではないので、ネームブランドや値段で決める必要はありません。冒頭に申しましたようにイタリアワインは名前が非常に複雑です。
「なんとなく」選ぶのではなく、スマートにソムリエにアドバイスを聞けばいいのです。以前飲んだことがあり、気に入っているものがあればリストにあれば、それに似たもの。あるいはソムリエに100%任せても問題ありません。その際にはバジェットだけはきちんと伝えて下さい。
もちろんお食事に合うワインを選ぶのが私達の仕事ですが、各クライアントの予算までは見抜けません。予算を伝えることはワインを選ぶ際の正しいステップなのです。
また、イタリアワインには複雑な格付けがあり、トップとされる「DOCGを頼めば大丈夫!」と思っている方が多いようですが、この概念も捨てて下さい。例えばイタリアで最高級とされるスーパータスカンはDOCあるいはそれより下のIGTランクです。もちろんDOCGに認定されるには様々な細かな規定をクリアしており、由緒あるワインではありますが、だからと言って単純に「最高峰」とは言えませんし、その一本がお食事に合うとは限りません。
ではここから、よりスマートにワイン選びが出来るよう、押さえておきたいイタリアワインを紹介します。
プロセッコはNG
最初にスパークリングワインから。イタリアのスパークリングといえばプロセッコが代名詞化しつつあるかと思います。念のために述べておきますが、プロセッコはグレラと呼ばれる品種から作られるシャルマ方式(大きなタンクで二次発酵が行われるもの)のスパークリングワインのことを指し、「スパークリングワイン」の意ではありません。スパークリングワインはイタリア語で「スプマンテ」と言います。
残念ながらプロセッコは安価な値段から海外で大ブームとなり、低品質なものが大半となってしまっています。中にはオーダーする価値のものもありますが、ごくわずかできちんと選び抜かないといけないので、プロセッコは避けた方がベターです。
日本ではフランチャコルタが人気を集めていますが、こちらも決して「スマートな選び方」とは言えません。フランチャコルタはプロセッコと違い、瓶内二次発酵(シャンパーニュ方式)から泡が生まれ、スパークリングワインとしてはランクが上がります。
もし、他のチョイスがないのであれば、フランチャコルタは「無難」ですが、イタリアのスパークリングワインには他にもより優れたものが多々あります。
一番のオススメはオルトレポ・パヴェーゼで作られるメトド・クラシコ。メトド・クラシコはイタリア語でシャンパーニュ方式の意ですので、こちらはぜひ覚えて下さい。オルトレポ・パヴェーゼはイタリアの中でもピノノワールの生産地として知られており、メトド・クラシコとして作られるスパークリングワインは最低でも70%ピノノワールを含み、強い果実味とコクがあるのが特徴です。
乾杯の一本だけでなく、お刺身や生かきに合わせるのにオススメです。特にロゼのスパークリングが高い評価を受けています。
次にヴェルディッキオから作られるメトド・クラシコ。ヴェルディッキオはマルケ州の土着品種で、長期熟成に向いているとてもポテンシャルの高いブドウ品種です。近年はヴェルディッキオから作られるスパークリングがイタリア国内だけでなく世界から注目を集めています。
シャルマ方式のものもありますが、せっかくスパークリングを注文するのであればメトド・クラシコをチョイスする価値があります。こちらは魚介類全般はもちろん、チーズやピッツアにもオススメの一本です。
肉料理にも合わせられる白
イタリアで有名な白ワインとなるとピノ・グリージョやソアヴェ(品種はガルガーネガ)が有名かと思いますが、市場に出回っている多くがライトでさっぱりしたものばかりです。乾杯の際にはこれらで問題ありませんが、お食事に合うようにクオリティの高いものを求める時にはあらかじめ特定の生産者を知っていない限り選び抜くのが難しいです。イタリアの白は魚介類だけでなく鶏肉や豚肉にも合わせられるフルボディのものも多く存在します。
最初にオススメする品種はヴェルメンティーノ。こちらはイタリアの中でもリグーリア州、トスカーナ州そしてサルデーニャ島で作られるものが有名で、産地により味が大幅に変わるので飲み比べをするのにも面白い品種です。リグーリアのものはミネラリティが豊富で爽やかなフィニッシュ、トスカーナはフルーティーで万能な一本、そしてフルボティのものが好みならサルデーニャのものをチョイスするといいでしょう。
他にもイタリア中部〜南部にかけて栽培されるグレーコとフィアーノはイタリアの白ワインの中でも昔からトップクラスのワインを生み出し、レストランやエノテカでも見つけやすい二種となっています。これらはぜひ白身肉と合わせてみて下さい。
キャンティ、バローロから卒業
最後に赤ワイン。こちらはファンの方が多いのではないでしょうか?イタリアワインの赤はサンジョベーゼを主体とするキャンティとネッビオーロから作られるバローロが世界的に有名で、イタリア国内でもレストラン、エノテカにて必ず見かける二本です。これらに関しては物申すことはありませんが、もう少し視野を広げたい方にオススメの二種を紹介します。
まず、キャンティ好きな方に。ロッソ・ディ・モンタルチーノをご存知ですか?こちらはキャンティ同様、トスカーナ州原産、ドライでフルーティーなワインです。トスカーナでトップクラスのワイン、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの「子供」的な存在で、より気軽に飲める一本です。こちらはトマトベースの料理、そしてきのこ料理と非常によく合います。サンジョベーゼの奥を深めたい方はまずロッソ・ディ・モンタルチーノをお試し下さい。
そしてバローロのようなエレガントなワインがお好きな方にオススメなのが、アリアニコです。こちらは南イタリアの土着品種で、特にカンパーニア州とバシリカータ州のものがトップクラスと言われています。アリアニコは「南のバローロ」と呼ばれ、長期熟成に向いております。ご自宅にセラーのある方、ぜひアリアニコを一本置いて下さい。肉料理全般、ジビエに合わせられる品種です。
終わりに
ソムリエが教えるスマートなイタリアワインの選び方、いかがでしたか?少しでもイタリアワインの世界に近づけたでしょうか?次回ワインをオーダーあるいは購入する際にはぜひ参考にしてみて下さい。
(Nicole)