イタリア人のジェラート好きは筋金入り。
長いサマータイムの夕刻、老若男女が特大サイズのジェラートを食べながらおしゃべりに興じる姿はもはや夏の風物詩となっています。
実は長い歴史を誇るジェラート、その進化はとどまるところを知らず、毎年さまざまなブームが生まれます。
ここ数年のジェラートは、世の風潮に忠実に健康とサステナビリティがテーマ。
その内情をご紹介いたします。
アレクサンダー大王もカール大帝も愛したジェラート
ジェラートの歴史は古く、古代のアレクサンダー大王や中世のカール大帝も愛していたと伝えられています。当時のジェラートは現在のシャーベットに近く、保存した雪にはちみつや果物の果汁をかけたものでした。
18世紀にはあるシチリア人が甘味料をはちみつから砂糖に変え、新たなジェラートの製法を生み出します。そのシチリア人フランチェスコ・プロコッピオはパリにカフェを開業。ジェラートで有名なカフェの老舗「プロコープ(プロコッピオのフランス名)」は現在も健在です。
上流階級しか口に入れることができなかったジェラートに牛乳が加えられるようになるのは、17世紀も後半でした。牛乳は下層階級のものというイメージがあったため、普及するのに時間がかかったのが理由です。
というわけでジェラートは、数世紀に及ぶ歴史の中でいくつもの進化を遂げてきた立派な食文化なのです。
参照元
・Il genio del gusto Alessandro Marzo Magno著 Garzanti刊
ジェラートもより健康的に!
イタリアにはジェラート専門店が星の数ほど存在します。
20世紀も後半、ジェラートが工業化され大量生産できるようになると、着色料がふんだんに入った鮮やかな色のジェラートがイタリア各地を席巻するようになりました。
この風潮にストップがかかったのは、21世紀に入ってまもなくのことでした。シンプルな原材料だけを使って、奇をてらわないジェラート本来の味への回帰が始まったのです。
とくにオーガニック食材への希求は、ジェラートにも及びました。一時期は種類が多いほど人気を博したジェラート専門店も、種類を減らして味と質で勝負する時代になったのです。
よろずのんびりしているイメージのあるイタリア人ですが、食に関しては自負がある国民。当初は高価格のオーガニックジェラートを敬遠していた人々も、美味しいものは健康的でなくてはならぬとばかりに、こぞってこうしたジェラートを愛好するようになったのです。
地産地消のフルーツ野菜を使用したジェラートが増えただけではなく、チョコレートやナッツ類の質も上がり、より素材の味がダイレクトに伝わるジェラートが巷にあふれるようになりました。
参照元
https://www.foodandtec.com/it-it/gli-italiani-preferiscono-free-from-veg-e-bio
https://www.veganok.com/arte-fredda-nel-2021-il-gelato-e-free-from-etico-e-sostenibile/
サステナビリティのジェラートとは?
大手のチェーン店ではなく、職人技をウリにする個人のジェラート専門店がもてはやされる昨今。
ここ数年のサステナビリティ重視の動きは、こうしたジェラートの世界にも浸透してきました。
質が良いからといってブランド力がある食材を使うのではなく、通常ならば廃棄されてしまう食材、ごく身近にある安価な食材をジェラートに活用しようという動きが活発になってきたのです。
たとえば、フィレンツェのある小さなジェラート専門店では、オレンジやレモン、生姜や洋ナシの皮だけを使ったテイストを考案しました。果実部分を使った商品の生産工程で廃棄されるはずのピール、独特の味わいに加えて食物繊維などの栄養が豊富な点も注目されています。
また、月桂樹をはじめとする身近な香草もジェラートの新たな原材料になっています。
模索するまでもなく手を伸ばせば手に入るローコーストの材料を使って、いかに美味しく、さらにヘルシーなジェラートができるか。職人たちが技を競う時代になりました。
イタリア版ミシュランともいえるガンベロ・ロッソが「最高のジェラート専門店」に与えるタイトル「トレ・コーニ(tre coni)」。その多くが、こうした努力を続けるジェラート職人に授与されているのも、世論に後押しされた結果なのかもしれません。
参照元
https://host.fieramilano.it/news0/news/il-gelataio-del-futuro-e-sostenibile.html
(cucciola)