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真のサスティナブルについて考えてみる

近年メディアで注目を集めている再生可能エネルギー。中でも洋上風力発電の情報が連日テレビや新聞を賑わせています。

数年前より全国各地の山や海に大規模な風力発電建設の計画が行政指導の下で行われており、2020年12月時点で日本の洋上風力発電は全国の7箇所に28基設置されています。

先月、筆者の元に地元九州のサーフィン仲間から「唐津・立神の波がなくなるかもしれない」と連絡が入りました。佐賀県と唐津市が県北部の玄界灘で洋上風力発電事業の誘致を進めていたのです。

地元のサーファー達が立ち上がり、再考を求める署名活動を全国展開しています。

名画「グラン・ブルー」のモデルとなったジャック・マイヨールが、初めてイルカに遭遇したのは、唐津の七ツ釜でした。このときの体験が彼の世界的なダイバー伝説を作ったと言われています。

玄界灘に面した九州サーフィン発祥の地・サーフィンの聖地とも呼ばれる唐津の立神の波。

波や景観といった自然環境の維持の重要性は、ときに利益を優先する国の新事業の計画の下では見落とされがちです。産業の発展と環境の維持。この問題を深く掘り下げていくと、持続可能な地球にするために今後わたし達はどうするべきなのか、という問いにたどり着くのです。

今回は、唐津・立神沖洋上風力発電計画の再考を求める署名活動をレポートしながら、これからの地球環境について考えてみたいと思います。

洋上風力発電事業とは?

現在、佐賀県では再生可能エネルギーへの転換推進として唐津沖約140k㎡に固定式洋上風力発電の誘致を検討しています。

洋上風力発電とは、風車を海上で回すことにより発電するシステムで、陸上風力発電よりも輸送や設置の制約が少ないため設備を大型化して大量のクリーンエネルギーを発電できるというメリットがあります。

現在、欧州を中心に導入が広がり、イギリスでは2000本を越える風力発電が稼動しています。

近年の再生可能エネルギー新事業「洋上風力産業ビジョン」

我が国でも、国土交通省と経済産業省が洋上風力を持続可能なエネルギー源として有望視しており
「洋上風力産業ビジョン」を策定、令和2年9月より秋田、能代、鹿島、北九州の4箇所を港湾基地と指定して事業展開を図っています。

(出典:国土交通白書 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r02/hakusho/r03/html/n2813c01.html)

この国の事業計画には国内の大企業や外資系企業が殺到し、北は石狩湾から南は鹿児島の吹上浜沖まで全国16箇所以上で誘致が検討されています。

四方を海で囲まれた九州でも、北九州、長崎五島沖ならびに西海沖、鹿児島、そして唐津沖が候補地にあがっています。

ところが、この急激な国の事業計画に驚いた近隣住民たちが各地で反対する会を立ち上げて行動を始めました。

秋田では、住民の1万筆あまりの反対署名とともに国や県に洋上風力建設中止の申し入れをしました。

石狩湾周辺の市民は、巨大風車の低周波音、超低周波音による健康被害を訴え、風力発電の建設をストップするチラシ1万枚を作成し個別配布しています

熊本の水俣市でも、海を破壊し人の生命や健康まで奪われた水俣に風車は要らない、と計画の白紙撤回を求めて署名活動が始まりました。

そして、唐津でも景観を損ねることや波がなくなることを懸念して、この風力発電建設場所ならびに事業の再考を求めて署名活動が始まったのです。

唐津・立神、九州サーフィン発祥の地

玄界灘に面した北部九州には、有数のサーフスポットが点在します。なかでも唐津・立神は、第二次世界大戦後に米兵がボードを持ち込んで波乗りを始めたサーフィン発祥の地として知られています。これまでに古き良きサーフ・カルチャーを生み出してきました。

立神の波は、七ツ釜沖からやってくる潮のうねりをうけて形成されます。海底は、両サイドがリーフ、中央がビーチになっているため、うねりの向き次第で様々なロングライドができる良質の波を生み出します。

しかし固定式洋上風力発電所が建設されれば、うねりが発電所に衝突することで波が形成されなくなってしまいます。

近年では、オリンピック種目とまでなったサーフィン。ここまでにサーフィンが定着できたのは、昔からある日本中の希少なローカルスポットのおかげです。こうした良質の波を生み出す自然環境があったからこそ、世界でも通用できる優秀なサーファー達を育てることができたのでしょう。

環境権が新しい人権として認められるようになって久しくなります。しかし、サーファー達には波という環境を維持する権利がまだ公然とは認められておらず、漁業者や離島居住者などのような利害関係者にも含められていません。

波があるか、なくなるかという問題ではなく、今のクオリティウェーブを未来にそのまま残すことが使命と考える地元サーファーを中心とした市民団体「唐津・玄海の海の未来を考える会」

https://www.facebook.com/karatsumirai

が立ち上がり署名活動を行っています。

▼署名/賛同サイト>>

https://www.change.org/karatsumirai

一度壊されてしまった自然環境は、将来二度と同じ状況に戻ることはありません。この市民団体の活動は、サーフィン発祥の地だからなのでしょうか、波という環境権を求めた最初のモデルケースです。

彼らは、洋上風力発電計画に真っ向から反対するわけではありません。波という環境が侵害されないような配慮をしてほしいと嘆願しているのです。そして本当に発電所は必要なのか?という、あまりマスコミでは報道されない疑問を我々に呈しているのです。

サスティナブルとはどういう意味?

最近よく耳にする「サスティナブル」とは、英語のsustain(持続する)とable(できる)を組み合わせた「持続可能な」「持ちこたえられる」「ずっと続けられる」という意味の言葉。サスティナブルな社会とは、人間と経済、環境を未来までずっと継承し続けられる社会のことです。

サスティナブルな社会のための行動変容

サスティナブルな社会を実現するためには、環境を壊さずに資源を使いすぎない。また現代の世代も未来の世代も豊かさを享受できるように配慮することが不可欠となります。

現代の環境保全は重要な課題ですが、それだけでは足りません。未来の世代も含め世界中の人々が地球上の豊かさを受け取れるようにすることも、サスティナブル社会の実現には必要な要素となります。

サスティナブルな社会を目指して

現在、世界中でサスティナブルについて議論されています。日本でも近年、企業やファッション業界でこのサスティナブルという概念が取り入れられるようになりました。マスコミでもサスティナブルがよく取り上げられます。

しかしサスティナブルという名前がついていれば、何でも良いというわけではありません。情報を鵜呑みにするのではなく、自分の五感を使って調べてみる、考え直してみる、意識してみる。自分なりの発見が得られるはずです。

まとめ

ミドル世代ともなると、社会、仕事、家庭とあらゆるシーンで責任を任されるようになります。結構、重要な立場でもあります。そのような中で今後、我々の子供や孫、玄孫たちの世代まで残して伝えていくべきものとは、どんなものなのか?真のサスティナブルとは、そうした問いかけの中で見つかるものだと思います。

唐津洋上風力発電の再考のための署名は、一度2月末で締め切り県に提出、その後も継続して行っていくそうです。海洋国のすばらしい景観や波を次世代に残していくためにご協力いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。我々の玄孫達が今の地球の豊かさを受け取れますように。

▼署名/賛同サイト>>

https://www.change.org/karatsumirai

(小川ひろみ)

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