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清酒発祥の地・伊丹の酒と酒スイーツ

大阪国際空港(伊丹空港)で知られる兵庫県伊丹市は、「澄み酒」を生み出した清酒発祥の地です。2020年には伊丹と灘五郷の日本酒をテーマとしたストーリーが日本遺産に認定されました。

江戸時代には、将軍たちをも魅了した伊丹の美酒。いったいどのような酒だったのでしょう。

この記事では、気鋭の酒造家たちによって生まれた澄み酒や日本酒の豆知識、伊丹の酒を使った大人スイーツをご紹介します。人生を彩る酒とストーリーと禁断のスイーツです。

清酒発祥の地・伊丹と酒

・極上の酒「伊丹諸白」の誕生
日本最古の酒……それは「八塩折之酒(やしおりのさけ)」。スサノオノミコトが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治するために作らせた酒です。

室町時代中期まで濁り酒だった酒が現在のような澄み酒として広まったのが、伊丹市鴻池の地です。戦国武将の山中鹿之助の長男・鴻池直文(こうのいけなおふみ)が透明度の高い「諸白(もろはく)」を作り、江戸へ広めたという碑が残っています。直文は商才があったと考えられ、後の鴻池財閥の祖になりました。「伊丹諸白」は江戸の庶民だけではなく、将軍たちをもうならせる極上の酒に成長しました。

1697年に伊丹の酒屋24件に帯刀が許され、それらの酒は江戸幕府へ献上する「御免酒(ごめんしゅ)」と呼ばれる官用酒になりました。中でも「老松」はとりわけ格式が高く、特別な存在だったことが当時の文献から伺えます。「江戸積み銘酒名寄」には、「老松」が東の大関に位置しており、宮中奉納酒や将軍の御膳酒として愛されました。

・伊丹の酒をより美酒にならしめた吉野杉
現代とは逆で、江戸へ向かうことを「下る」と言っていました。そのため、江戸へ運ばれる伊丹の酒は「下り酒」と呼ばれ、江戸の人々からもてはやされていたようです。
吉野杉の樽に詰められた「下り酒」は、船に揺られながら木の香ただよう美酒となり、より一層芳醇さを増したのです。

酒のしみ込んだ使用後の樽は、殺菌力もあり割りばしとして使われました。

また庶民たちの間では、上から読んでも下から読んでも「伊丹の酒、今朝飲みたい(イタミノサケケサノミタイ)」という言葉遊びが流行したほど愛されていました。伊丹の「下り酒」ではない酒を「下らない酒」と呼び、「くだらない=面白くない」の語源になったという説があります。

・二日酔いに悩まされていた江戸の武士たち
酒を愉しんだ翌日、二日酔いに苦悩するのは今も昔も一緒です。江戸時代は、二日酔いしないように指南書も出回っていました。

指南書によると酒席では、糖分を補足してアルコール分解時の血糖値の低下を押さえるために、羊羹や干し芋などを摂ることを勧めています。
当時の二日酔い治療法は、姿勢を正し深呼吸をしながら、正座で長唄を唄うこと。体内に酸素を取り入れ、アルコールの排出を促す効果があると考えられていたようです。

世界に評価される伊丹の酒

伊丹の酒は、日本人のみならず世界からも注目を浴びています。深い味わいと香り、キレの良さなど酒の個性が高く評価されています。



超特撰白雪伊丹諸白本醸造(小西酒造株式会社)
世界最大規模、最高権威のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2021のSAKE部門:本醸造酒部門にてゴールドメダルを受賞した酒。麹米と掛米両方に精白米を使用した諸白仕込みです。キレのあるやや辛口で、コクがあり爽やかな香りが特徴です。

https://choujugura.com/

・KONISHI 吟醸ひやしぼり(小西酒造株式会社)
IWC2021のSAKE部門:吟醸の部にてシルバーメダル受賞。フルーティーな食中酒で、後味がスッキリしています。チーズに合わせてもおいしい日本酒です。

https://choujugura.com/

・老松 純米大吟醸(伊丹老松酒造株式会社)
山田錦のみを丹精込めて仕込んだ純米大吟醸酒。芳醇な香りとキレのあるすっきりした甘味が特徴です。木の化粧箱入りなので、贈答品にもおすすめです。

http://www.oimatsu.biz/

日本酒の種類について

吟醸酒や大吟醸酒、純米吟醸酒など種類が多い日本酒ですが、違いはご存じでしょうか。
酒を造る際の米の精米歩合(削り具合)とアルコールを添加するかしないかの違いなのです。
次のように分類されます。

・純米酒
精米歩合70%以下、アルコール添加なし。

・本醸造酒
精米歩合70%以下、醸造用アルコール添加あり。

・純米吟醸酒
精米歩合60%以下、アルコール添加なし。

・吟醸酒
精米歩合60%以下、醸造用ある添加あり。

・純米大吟醸酒
精米歩合50%以下、アルコール添加なし。

・大吟醸酒
精米歩合50%以下、醸造用アルコール添加あり。

酒米を多く削るほど、雑味のないやわらかな味わいになります。

燗か冷やすか、旨さの頂点を探す

日本酒は、温度によって味や香りに変化が表れます。温めたり冷やしたり、好みで飲んでいただくのが一番ですが、酒の種類によって最も旨さが引き出される温度があります。ぜひ試してみて、自分好みの温度を探してみて下さい。

・純米酒
旨味が広がる
日向燗(30度)、人肌燗(35度)、ぬる燗(40度)

・純米酒・本醸造酒
辛さやインパクトが増し、味わい深くなる
上燗(45度)、熱燗(50度)、飛切燗(55度)

・純米酒・本醸造酒
やわらかい味になる
常温(20度)、涼冷え(15度)

・純米大吟醸・純米吟醸
香りが引き立つ
花冷え(10度)、雪冷え(5度)

伊丹の酒スイーツ

・清酒の切れ味を堪能する菓匠宝樹庵の「酔雫」

菓匠宝樹庵(ほうじゅあん)のご主人は、元ドイツ菓子職人でした。和菓子の伝統を引き継ぎながら、洋菓子のテイストが見え隠れする個性的な逸品を作り出しています。

清酒を使用した「酔雫(よいしずく)」は、日本酒の香りが立ち上る、男性にも人気のゼリーです。清酒と甘酒の2種類あり、どちらもロックアイスのようななめらかな表面を持っています。キリっとした清酒の切れ味を感じることができるシロップは絶品です。

・日本酒がたっぷりしみ込んだ「日本酒ケーキ」

小西酒造が運営する「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵ショップ」で購入できる「日本酒ケーキ」は、ほろ酔い気分になれるスイーツです。伊丹諸白がしみこんだ生地は酒の香りが立ち、しっとりした口当たりです。隠し味の塩が、味に奥行きを出しています。

・酒粕の香り「酒蔵羊羹 おにつら」

老松酒造の酒粕を使用した「酒蔵羊羹 おにつら」。伊丹の酒造家に生まれた俳人・上島鬼貫(うえしまおにつら)の名を冠する白小豆の羊羹です。酒粕独特の香りが高く、酒粕好きな人にはたまらない逸品です。

清酒発祥の地・伊丹で大人の愉しみを

歴史を感じさせる酒蔵や風情ある街並みが残る伊丹。酒造りに真っ直ぐ向き合い、結果を残した酒造家たちの想いは、今も伊丹の酒造りに大きく影響しています。そんな伊丹ならではの酒やスイーツを愉しみながら、清酒の誕生ストーリーに想いをはせてみてはいかがですか。

(竹村ヒロミ)

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