赤ワインが持つ魅力のひとつといえば、熟成に伴う美しい“色合い”です。
濃く、真っ赤でいきいきとした赤ワインが時間を経るにつれ、オレンジがかったレンガ色になっていく様は神秘といっても過言ではないでしょう。
さて、もともと濃い色合いだった赤ワインなのに、なぜレンガ色と変化していくのでしょうか。
本日は赤ワインの色が変化していく理由を解説していきます。
赤ワインが赤い理由
そもそも赤ワインは、なぜ赤い色をしているのでしょうか。
赤ワインに使用されるブドウは、基本的に黒ブドウと呼ばれる果皮が黒色(紫色)のブドウです。
ブドウの果皮にはポリフェノールが多く含まれていますが、そこにはポリフェノールの一種である“アントシアニン”も一緒に含まれています。
じつは、このアントシアニンが赤ワインの色に関連しているのです。
・アントシアニンと赤ワイン
ポリフェノールの一種であるアントシアニンは、色に関係する天然色素で赤ワインは製造工程上、ブドウの果皮と種子、果肉を一緒にアルコール発酵させることから、果汁にこのアントシアニンも含まれることになります。
つまり、赤ワインが紫色や赤色をしている理由は、ブドウの果皮に含まれるアントシアニンが果汁に溶け込んでいるからなのです。
・アントシアニンは反応する
さて、もう少しワインとアントシアニンの関係について学んでおきましょう。
製造途中のワインに含まれているアントシアニンですが、じつはまだ安定していません。
アントシアニンは比較的反応しやすい成分で、酸素やほか成分と化学反応を繰り返します。この反応を繰り返していくうちにアントシアニンは反応しにくくなっていき、結果的に色調が赤ワインとして安定するわけです。
赤ワインは主に仕込みから2年後に市場に出回ることが多いですが、味わいや色調の安定化が目的と考えられます。
熟成による変化
ここからは本題である、赤ワインの熟成による色調の変化について解説していきましょう。
赤ワインの多くは熟成されており、中には20年、30年と長期熟成を経たものなども存在します。
その理由としては、赤ワインには前述したポリフェノールの一種であるタンニンなどが豊富に含まれているほか、酸度もほかの酒類と比較して高め。
これらが、“天然の酸化防止剤”の役目を担っているため熟成しても腐ることがないのです。
(酸化による劣化などはある)
この熟成期間の間に赤ワインの色は少しずつ変化していきます。
最初は濃いガーネット色だったものが、淡くオレンジがかっていき、ルビー色、褐色、レンガ色などに変化していきます。とくに優れた赤ワインは美しいレンガ色に変化し、神秘的な印象を与えることさえあるほどです。
・タンニンの減少
“熟成された赤ワインはまろやかな味わいになる”と聞いたことはないでしょうか。
若い頃は荒々しいワインだったものの、10年の熟成を経て丸みを帯び飲みやすくなった…。
ワイン好きの方であれば、一度は経験があるはずです。
赤ワインには豊富にタンニン(渋み)が含まれていますが、この成分もワイン液中のさまざまな成分と重合を繰り返します。この重合が増えていくほど分子が重くなり、結果的にこれらタンニンは澱になり沈殿。
つまり、熟成期間が長くなればなるほどタンニン量は減少していくことになります。
・アントシアニンも減少する
アントシアニンは、このタンニンと結合することで色調が安定します。
そのため一定期間は明るい赤色や濃い赤色なのですが、時間が立つに連れてアントシアニン量もタンニンと共に減少。アントシアニンが多ければ多いほど濃い色調になるため、減少に伴って色合いが淡くなっていくのは当然です。
つまり、赤ワインがレンガ色に変化していく神秘的な減少は、熟成によるアントシアニンの減少などが要因ということなのです。
白ワインの色調について
一方、白ワインはその名の通り、白い(透明)な色合いが特徴のワイン。
その理由は、白ブドウを使用していることと(一部、黒ブドウを使用する場合もある)、果皮と種子が先に取り除かれた後に果汁だけでアルコール発酵されるからです。白ワインは赤ワインと比較してポリフェノール量が少ないため劣化が早く、本来熟成させるよりもフレッシュ&フルーティーな状態で飲用されることが求められます。
一般的な白ワインは酸素に反応しやすいため短期間で褐色化。さらに、風味も劣化してしまうのです。しかし、一方で熟成を経た黄金色の神秘的な白ワインが存在しているのも確かです。ここからは、白ワインの熟成と色調についても解説していきましょう。
・果皮の色と樽熟成
白ワインの原料は白ブドウですが、中には果皮や淡い紫色の「グリ(灰色)」と呼ばれるものもあります。
こういったブドウは果皮が厚く若干のアントシアニンを含むため、一定期間果皮と果汁を浸漬させるような製法で造られた白ワインは、ほんのり色合いが濃いものになります。
もちろん、ポリフェノール量も一般的な白ワインよりは多いことから熟成にも多少耐えることが可能です。
また、高級ワイン産地として知られるフランスのブルゴーニュでは、シャルドネ種を使用した樽熟成の白ワインを造ることで有名です。
じつは樽からもポリフェノールが析出しており(ブドウ由来のもととは別)、樽内に入っている白ワインは色合いが濃くボリューミーに仕上がります。
これら白ワインは一般的な白ワインと比較して熟成が可能であり、ポリフェノール量は少ないもののゆっくり時間をかけて正しく熟成させると色調はキレイな黄金色に…。
赤ワイン同様、白ワインも熟成で美しく変化していくのです。
自宅でキレイな色調に熟成させるならワインセラー
自宅で赤ワインや白ワインを美しい色調に熟成させるためには、やはりワインセラーが必須です。
どんなに素晴らしいワインでも、正しく熟成させないと劣化してしまう可能性があります。
ワインセラーは、湿度と温度、さらに振動、臭い、光を調節できるため、ワイナリーのカーヴ(ワインを熟成させる洞窟)と同レベルでワインを管理できます。
例えば、お子さまや孫が生まれた時に一緒に飲むために赤ワインを熟成させるといった方は、必ず高品質なワインセラーで熟成させるようにしましょう。
ワインは生き物
赤ワインが美しいレンガ色になるためには、長い年月が必要になります。
決して一朝一夕で実現できるものではない神秘的な変化です。ワインは出来上がった後も、じっくりとその姿を変化させます。そのプロセスを大事な人と共有してみるのはいかがでしょうか?
(ナコゴミ コウイチ)